理念と目的

当協会の理念は、働く障害者が一人でも多く増えるための社会・環境・制度を作り、いきいきと仕事をして、生活やアクティビティを楽しみ、障害があっても定年まで健康で元気に働くことを支援することです。

(1) 身体に障害がある社会人が健常者と同様に昇進していける職場を作る
 当協会の設立された1999年(15年前)と比べると障害があっても仕事に就く人の数は増加しています。しかし欧米と比べると障害者の社長や頭取など役員まで昇進している障害者は非常に少なく、昇進に関してはまだ健常者と同様ではないのが現実です。障害者枠での雇用によって昇進が難しかったり、障害者だから出張が難しいと考えられて事務系の仕事にしか就けなかったりすることも昇進が難しくなる原因の一つです。
 当協会の会員はそれを打ち破って活躍している者が中心となっています。まず我々が道を作り、頑張って働けば健常者と同様に昇進して行けること、障害の有無にかかわらずその人の能力で判断されることを社会や企業に理解させ、日本にも欧米のように障害のある社長,頭取,役員,管理職が多く生まれることを目指して活動して参ります。

(2) 二次障害を防止して障害者が長期間働けることを支援する
障害のある社会人が高齢化していく課程で直面する大きな問題に「二次障害」があります。障害を負ってから時間が経つにつれて褥瘡・変形・脱臼・拘縮・異常な筋緊張・呼吸器系の問題など様々な二次障害が生じます。日本では「二次障害は障害者にとって避けられないもの」という考えがありますが、欧米では姿勢の改善と酷使の軽減で二次障害を防止できることが実証されています。姿勢保持の専門家である会長とともに当協会では車いす使用者の二次障害を防止して定年まで元気に働くことができるように支援します。

(3) 働く障害者に優しい社会・環境・制度を作る
「障害者の社会参加のため」にバリアフリーが進み、新しい制度が作られています。しかしそれらが「働く障害者」のための施策とは言い難いことが多々あります。働くことが辛いもので、働くことにメリットがなければ働こうとする障害者は増えないでしょう。働く障害者を一人でも多く増やすために、働きやすい環境と制度を作り、組織の一員として健常者と同等の活動ができるようなバリアフリー環境を作って行きます。

(4) 働く障害者こそず発言すべき
欧米の障害者のように働く障害者こそが改革のための発言をすべきだと考えます。働く障害者を増やすためには働いている障害者が発言すべきです。私たちは文句ではなく実現可能で具体的な提案を、段階を踏んで行うことで社会を変えてきました。今日では具体的な提案であれば、企業も行政も喜んで受け入れてくれるようになっています。社会は変えられないのだと発言しないのではなく、当事者である働く障害者自身が中心となって考えた、具体的で実現可能な提案を、段階を踏んで行っていけば、当事者のニーズに合った、無駄のない社会の実現が可能なのです。

(5) 消費者としての障害者を理解させる
日本で障害者に対する誤った考え方が改まらない理由のひとつに企業が障害者を消費者として見ない、扱わないという事実があります。「障害者から儲けてはいけない」という考えが、障害者向けの製品の開発を遅らせています。アメリカでは障害者を消費者の一人として企業が認めた時、チャリティではなく、顧客サービスとして企業や店が障害者用の駐車場、トイレ、スロープ等を作りました。日本でも企業の考え方を変え、障害者も大切な消費者であると理解させることが日本の障害者を取り巻く環境を変える最良の方法だと考えます。それはまた障害者向けの製品の開発や雇用の促進にも繋がります。我々の存在により社会人であり消費者である障害者について企業に理解させ、日本の障害者を取り巻く改革において噛み合っていない最後の歯車といわれる企業の考え方を変えさせたいと考えます。

(6) 義務や責任を踏まえた上での権利や自由の要求
障害者の要求は「権利」の元に行われてきました。しかし自分達が義務や責任を負うことは少なかったと考えられます。社会も、障害者に対して義務や責任を負わせることに負い目を感じ、義務や責任を負わせてはいけないと勘違いしていたことで、様々な改革が遅れたと考えられます。特に障害者の中でも身体障害者は法的にも責任能力があり、健常者と同様に必要な義務を負うことは当然です。欧米では知的障害者や精神障害者にさえ責任の負える高いレベルの障害者が現れています。権利や自由の裏側には、必ず義務や責任があることを忘れて行動している間は真の変革は実現できないと考えます。
 障害者が最も自由に生活でき、多くの権利が与えられているアメリカでは、障害者が自己責任を持ち、権利を得るためにはそれに見合った義務を負うことが当然だとされています。その結果、欧米でも群を抜いて住み易く、社会参加が容易で、物事に挑戦する機会が多く与えられている国になったのです。我々は、会員資格を勤労者を中心とする社会人である障害者としました。仕事における義務を負うことはもちろん、税金という国民の義務も果たし、障害者を取り巻く環境の向上のためには、義務や責任を負うことを厭わない障害者だからこそ発言し、提案する権利があるのです。そのような障害者が日本にも多く存在することを社会に認知させ、そのような考えを前提とした提案を行うことで社会の改革を行っていきたいと考えます。

(9) 働く障害者の声を行政、そして企業に伝える
日本の障害者団体の多くは働く障害者を中心とした団体ではありません。反対に最近増加している、健常者と同じように働いている障害者は団体に加入しません。その結果、納税者であり消費者である障害者の意見が、行政や企業に届かないという問題が生じています。働く障害者は、健常者と同様の義務を負い、責任を果たし、生活しています。この社会を構成する一員としての障害者の意見が行政や企業に届かないのは問題です。既存の団体には、それぞれのグループを代表して発言する権利があります。しかし、働く障害者の意見が届かないのは問題です。我々は、働く障害者のコンセンサスをとり、意見をまとめて行政や企業に発信します。また、依頼を受けて、納税者であり消費者である働く障害者の意見をまとめて報告します。







協会設立時の理念と目的(1990年)

(1) 身体に障害を持った社会人について社会に理解させる
日本では身体に障害を持っても働いている障害者について、あまりにも社会に理解されていません。「家に閉じこもっていて外に出てこない」「身障者は年金をもらって施設で暮らしている」などという身障者に対するステレオタイプも依然として存在します。驚く事に一般の市民はもちろん、行政や身障者に関わる人にもそのような人がまだ存在します。障害者に対する政策が「障害者の社会参加のため」とは言っても「働く障害者」に対して配慮していないのはそれが原因ではないでしょうか。我々の目的のひとつは障害を持っていても健常者と全く変わらずに働いている障害者について、その存在、人口、その考え方を日本社会に対して認知させる事です。

(2) 「社会参加」の意味をより高いレベルにする
日本では「障害者の社会参加のため」と銘打って行われている様々な政策、制度、規則、支援活動等が存在しますが、依然として「家に閉じこもっている障害者を外に出してあげる」、「何かさせてあげる」というレベルのまま何十年も変わっていません。我々は「社会参加」の意味をより高いレベルに引き上げ、障害者が社会人として活動すること(特に就職と就業)そしてその前段階である就学(特に普通校への就学)を支援できる政策、規則、制度等の立案、そして支援活動や身障者を取り巻く人々の啓蒙活動を行います。

(3) 働く障害者に優しい社会を作る
前述のように障害者に対する政策が「障害者の社会参加のため」とは言っても「働く障害者」に対して考慮していない事で、無理して働くよりはと、年金に頼って暮らすことを選んでしまったり、途中で仕事を辞めてしまう障害者も少なくありません。しかし高齢者と障害者の増加により、現在の年金制度が維持できるとは考えられません。近い将来維持できない時代が到来するでしょう。その時、突然カットされる可能性のある年金に頼って生活している障害者はどうなるのでしょうか?今から障害者が快適に働ける環境を作っておくこと、そして働こうとしない障害者に対する啓蒙活動も必要でしょう。私たちはそれらの目的に対しての活動を行っていきます。

(4) 働く身障者に優しい規制や制度を作る
例えば「駐車禁止指定除外」の標章も高速道路の半額利用制度も指定車両一台に限定されるため、仕事で営業車等を使用している場合には、仕事ではその利益を得られないことになります。我々は、障害者がより快適に働くための規制や制度を作ることを目的に活動を行っていきます。

(5) 消費者としての障害者を理解させる
日本で障害者に対する誤った考え方が改まらない理由のひとつに企業が障害者を消費者として見ない、扱わないという事実があります。「障害者から儲けてはいけない」という考えが、障害者向けの製品の開発を遅らせています。アメリカでは障害者を消費者の一人として企業が認めた時、チャリティではなく、顧客サービスとして企業や店が障害者用の駐車場、トイレ、スロープ等を作ったと言われています。日本でも企業の考え方を変え、障害者も大切な消費者であると理解させる事が日本の障害者を取り巻く環境を変える最良の方法だと考えられます。それはまた障害者向けの製品の開発や雇用の促進にもつながるはずです。我々の存在により社会人であり消費者である障害者について企業に理解させ、日本の障害者を取り巻く改革において噛み合っていない最後の歯車といわれる企業の考え方を変えさせたいと考えます。

(6) 文句ではなく社会を改革するための提案
今までの日本の障害者は、文句や不平・不満を言う事はあっても具体的な提案をする事が少なかったと考えられます。その結果として改善されることは少なく、たとえ改善されたとしても当事者である障害者自身にとって満足のいくものではありませんでした。私たちは、文句ではなく実現可能で具体的な提案を、段階を踏んで行う事で社会を変えようと考えます。今日では、具体的な提案であれば、企業も行政も喜んで受け入れてくれる時代になっています。社会は変えられないのだと発言しないのではなく、当事者である障害者自身が中心となって考えた、具体的で実現可能な提案を、段階を踏んで行っていけば、当事者のニーズに合った、無駄のない社会の実現が可能なのです。

(7) 義務や責任を踏まえた上での権利や自由の要求
今までの日本の障害者の多くは、与えられることに慣れきっていました。そのため日本の障害者の要求は「権利」を中心に行われてきました。自分が義務や責任を負うことは、軽視されたり拒否されることもありました。社会も、障害者に対して義務や責任を負わせることに負い目を感じ、義務や責任を負わせてはいけないと勘違いしていたことで、様々な改革が遅れたと考えられています。特に障害者の中でも身体障害者は法的にも責任能力があり、健常者と同様に必要な義務は負うべきなのです。欧米では知的障害者や精神障害者にさえ、責任の負える高いレベルの障害者が現れています。権利や自由の裏側には、必ず義務や責任がある事を忘れて行動している間は真の変革は起こらないと考えます。障害者が最も自由に生活でき、多くの権利が与えられているアメリカでは、障害者が自己責任を持ち、権利を得るためにはそれに見合った義務を負うことが当然だとされています。その結果、欧米でも群を抜いて住み易く、社会参加が容易で、物事に挑戦する機会が多く与えられている国になったのです。我々は、会員資格を勤労者を中心とする社会人である障害者としました。仕事における義務を負う事はもちろん、税金という国民の義務も果たし、障害者を取り巻く環境の向上のためには、義務や責任を負うことを厭わない障害者だからこそ発言し、提案する権利があるのです。そのような障害者が日本にも多く存在することを社会に認知させ、そのような考えを前提とした提案を行うことで社会の改革を行っていきたいと考えます。

(8) 本当の身障者の声を行政、そして企業に伝える
今までは、まともな考えの障害者ほど発言せず、ごく少数の圧力団体的な障害者が声高々に発言していました。その結果、彼らの言動が障害者全体の意見だと勘違いされ、障害者政策を遅らせるだけでなく、障害者のイメージまで悪いものにしていました。企業も障害者向けの製品の開発に躊躇するのは、それが完璧でなければ文句を言われ、潰されてしまうと考えていたからです。しかし、障害者を取り巻く環境を変え、障害者を助ける素晴らしい製品を多く生み出すには多くの企業の市場参入と競争が必要です。それを阻んでいる者や言動は排除されなければならず、それが出来るのは彼らと同じ障害者である我々なのです。我々は必要に応じてコンセンサスをとり、障害者の本当の声を行政や企業に伝える事で改革や製品の開発を応援します。

(9) 働く障害者の声を行政、そして企業に伝える
日本の障害者団体のほとんどが、働く障害者を中心とした団体ではありません。また、最近増加している、健常者と全く同じように働いている障害者には団体に加入しない者が増えています。その結果、納税者であり消費者である障害者の意見が、行政や企業に届かないという問題が生じています。働く障害者は、健常者と同様の義務を負い、責任を果たし、生活しています。この社会を構成する一員としての障害者の意見が行政や企業に届かないのは問題です。既存の団体には、それぞれのグループを代表して発言する権利があるでしょう。しかし、働く障害者の意見が無視されているのは問題です。我々は、働く障害者のコンセンサスをとり、意見をまとめて行政や企業に発信します。また、依頼を受けて、納税者であり消費者である働く障害者の意見をまとめて報告します。

(10) 社会人である身障者こそが発言すべきであり日本を代表すべきである
日本から障害者関連の国際会議に出席する者は「運動する事自体を仕事としている者」か「施設暮らしの障害者」ばかりだと欧米の障害者運動家に指摘された事があります。彼らは、皆、仕事を持ち、社会人として働きながら障害者の生活の向上のために活動を行っています。「仕事を持つ、働く障害者」と「年金をもらい施設で暮らす障害者」では意見の重みが違う、「義務や責任を伴わない権利や自由の主張は通らない」、「最も発言すべき社会人である障害者が意見を言わなかった事が日本に変化が起こらなかった理由だ」とも指摘されました。現在、日本の障害者の現状も知らないような人が国際会議等に出席しています。私達は国内の会議や審議会はもちろん、国際会議等にも協会から代表者を送り、我々の意見を伝えると共に、今まで知らされる事のなかった国際会議の内容や結果を情報として提供して行きたいと考えます。

(11) 地域ごとに意見を提供できる身障者を確立する
現在、企業も行政も障害者や高齢者の増加を理解して、アクセシブルな施設やそれを指示する規制の必要性を実感しています。前述の様な具体的な提案をすれば、それが実現する可能性は極めて高いのです。ところが企業も行政も誰に聞いていいのか判らないと口を揃えて言います。しかし審議会の答申や白書には障害者の意見が反映された事を示すために「障害者」の名前さえつけば構成する会員や活動内容がわからなくても適当な障害者団体に意見を聞いたり名前を使用する事があります。私達は本当に障害者が望む具体的で実現可能な提案を行う事を示し、企業や行政から信頼され、各会員が地元で意見を聞かれる存在となることを目指します。

(12) やる気のある前向きな身障者のみの団体
日本の多くの障害者団体は障害の種別等によって会員資格を決めていました。その結果、せっかくやる気のある人がいても改革を望まない者が足を引っ張ったり、意見がまとまらないこともありました。ある有名なスポーツの監督が「戦う意志がなければ、勝つことはできない」という言葉を残していますが、改革の意志のない者と一緒に改革は行えません。我々は、改革に前向きな者だけで団体を構成することで、意見をまとめ、コンセンサスを提示して日本の障害者の改革を本気で行って行きます。やる気のない者を説得して同じ方向を向かせるにはたいへんな労力と時間を要します。多くの団体はこの段階で行きづまってしまうのです。我々は、同じ方向を向いていない障害者を無理に統合しようと考えません。しかし、我々の活動と会員がロールモデルとなることで、彼らが同じ方向を向くようになれば、いつでも協力していく考えです。

(13) 日本版ADA法の作成
日本では障害者保護の法令と考えている人も多いADA法(アメリカ障害者法)は障害者に平等なチャンスを与え、社会の中で自立させ、経済的にも自足させるための法律なのです。ADA法の「調査結果及び目的」の項の中に次のような項目があります。

(a-6) 障害者に関する国としての正しい目標は、機会均等、完全参加、自立生活、経済的自足を保証することである。
(a-7) 依然として存在する不公正で不必要な差別と偏見は、障害者に対して、平等な立場に立って競争を行う機会と、このような機会を追求することを否定しており、その結果として、依存性と非生産性に起因する何十億ドルもの不必要な出費をアメリカに負担させている。

いくら年金を与えたり保護しても、参加したりやりたい事に挑戦するチャンス(機会)が与えられなければ、いつまでたっても障害者は社会のお荷物としか考えてもらえない。チャンスを与え自立、そして経済的自足が出来るようにするのが国の役目だというのです。
福祉政策や年金、助成という面ではスウェーデンを中心とする北欧の国の方が優れた面もありますが、そのために60%の税金を取る事を日本ですぐに行うのは無理でしょう。住み易さや社会参加の容易さという面でアメリカが群を抜いているのはアメリカの障害者政策が「助成」という事ではなく平等なチャンスと自立を目的としたものだからです。チャンスさえ与えられ平等な立場で競争を行うことができれば障害者でも健常者と対等にやっていける、というのがその考え方です。高齢化と身障者の増加で年金や助成金に期待の持てない日本ではアメリカ的な政策の方が実現可能なのではないでしょうか。もちろんこれは身障者の「やる気」にかかっています。
また、ADA法では障害者に機会を与えない事でかかる予算の削減も目的に挙げています。これを目的にすれば行政や政府の協力も得られるのではないでしょうか。上記のように、保護を中心とするのではなく、 障害者が自立し、働き、経済的に自足し、年金や助成金に頼らなくても生活できることを目指せば、日本版ADA法の立法も可能だと考えます。 そのためには社会人である障害者が中心となって進めていく必要があるのです。


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